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住宅ローンの連帯債務は、離婚が成立しても自動的に解消されるわけではありません。適切な手続きを取らずに放置すると、将来的な返済トラブルや自宅の競売といった深刻な事態を招く原因となります。こちらでは、連帯債務の基本的な仕組みをはじめ、離婚時に生じるリスク、連帯債務から外れるための現実的な方法について詳しく解説します。
離婚しても住宅ローンの連帯債務から外れないって本当?
離婚手続きが完了すれば、住宅ローンの連帯債務も解消されると誤解されやすいですが、実際はそうではありません。住宅ローンの契約は金融機関と債務者との間で結ばれたものであり、夫婦間の離婚とは全く別の法的な問題として扱われます。「離婚後は夫(または妻)がローンを支払う」という当事者間の合意があっても、その取り決めは金融機関に対して法的な効力を持ちません。
離婚協議書や公正証書で支払い義務を定めた場合でも、金融機関が連帯債務者の変更や免責を承諾しない限り、連帯債務の返済義務は残り続けます。そのため、離婚後のトラブルを未然に防ぐには、連帯債務をはじめとする契約形態の違いを正確に理解しておくことが重要です。
連帯債務とは
連帯債務とは、一つの住宅ローンに対して複数人(主に夫婦)が共同で借り入れを行い、それぞれが借入金の全額に対して同等の返済義務を負う契約形態です。夫婦が連帯債務者となっている場合、金融機関は夫と妻のどちらに対しても、ローン残高の全額を請求する権利を持ちます。夫婦間で夫が7割、妻が3割といった返済割合を決めていたとしても、それは当事者間の内輪の約束に過ぎず、金融機関には主張できません。連帯債務は非常に責任が重い契約であり、離婚に伴う財産整理の際には特に慎重な対応が求められます。
連帯保証とは
連帯保証とは、住宅ローンを借りた本人(主債務者)が返済困難になった場合に、連帯保証人が代わって返済義務を負う契約です。一般的な保証人と異なり、連帯保証人には「まずは主債務者の財産から請求してほしい」と主張する権利(検索の抗弁権・催告の抗弁権)がありません。金融機関は、主債務者の返済状況にかかわらず、いきなり連帯保証人へ請求を行うことが可能です。主債務者とほぼ同等の重い責任を負うため、離婚後であっても金融機関の承諾がない限り、連帯保証人から外れることはできません。
ペアローンとは
ペアローンとは、1つの物件に対して夫婦それぞれが別々の住宅ローン契約を結び、お互いが相手のローンの連帯保証人となる借入方法です。2本の独立した契約が存在するため、夫婦双方の収入を合算して借入総額を大きくできる点がメリットです。しかし、離婚後は自身のローン返済義務が残るだけでなく、元配偶者が自身のローンを滞納した場合、連帯保証人として相手の残債まで返済を求められるリスクが生じます。連帯債務と同様に権利関係が複雑に絡み合うため、離婚時には所有権や債務の整理を確実に行う必要があります。
連帯債務のまま離婚・放置した場合のリスク
相手が返済を滞納すれば自分に一括請求がくる
連帯債務者は、主債務者と全く同じ返済義務を負う立場にあります。離婚時に「今後は元配偶者が全額支払う」と約束して家を出たとしても、家に残った相手が返済を滞納すれば、金融機関はもう一方の連帯債務者に対して残債の返済を請求します。滞納が数ヶ月続くと分割で返済する権利を失い、残債の一括返済を求められるケースが一般的です。夫婦間の約束は金融機関との契約に優先しないため、「自分はもう住んでいないから関係ない」と放置することは極めて危険な状態といえます。
家が競売にかけられ連鎖的に自己破産に追い込まれる
住宅ローンの滞納が続くと金融機関は債権を回収するために、担保となっている自宅を差し押さえて競売にかけます。競売による売却価格は市場相場より大幅に安くなることが多く、売却代金でローンを完済しきれないケースがほとんどです。競売後も残ったローン(残債)の返済義務は消滅せず、連帯債務者にも請求が向かいます。元配偶者に支払い能力がない場合、自身が多額の負債を抱え込むことになり、最終的には自己破産を選択せざるを得ない状況に連鎖するおそれがあります。
共有名義のままだと将来家を売ることもできない
連帯債務でローンを組んでいる場合、不動産の所有権も夫婦の共有名義となっていることが一般的です。法律上、共有名義の不動産を売却するには共有者全員の同意が必須となります。離婚後に相手と連絡が取れなくなったり、売却条件で意見が食い違ったりすると、家を売りたくても手続きが一切進みません。さらに、ローンが残っている状態での売却には金融機関との複雑な調整も必要です。共有状態を放置することは、将来的な住み替えや資産整理の選択肢を大きく狭める要因となります。
【要注意】勝手に名義変更を行うと契約違反になる
離婚に伴い、「妻に家を譲るから」と金融機関に無断で所有権の名義変更(持ち分の贈与や売買など)を行うことは、住宅ローン契約の重大な違反行為にあたります。住宅ローンは、契約時の債務者の属性や担保不動産の状況を前提に融資条件が決定されているため、金融機関の承諾なく所有者や債務者を変更することは固く禁じられています。無断での名義変更が発覚した場合、契約違反として即座に残債の一括返済を求められるリスクがあります。名義変更を検討する際は、必ず事前に借入先の金融機関へ相談し、正式な承諾を得てから手続きを進めることが鉄則です。
住宅ローンの連帯債務から外れる方法
他の親族を連帯債務者(連帯保証人)として立てる
金融機関の承諾を得ることを前提に、十分な収入や資産を持つ別の親や兄弟などの親族に連帯債務や連帯保証を引き継いでもらう債務引受という方法があります。新たな引受人の信用力が金融機関の基準を満たせば、元配偶者を債務から外すことが可能です。ただし、この変更が認められるかどうかは金融機関の厳格な審査次第であり、簡単に承認されるわけではありません。また、引受人となる親族に多大なリスクを背負わせることになるため、親族間の十分な協議と理解が不可欠です。
別の物的担保をたてる
非常に限定的なケースですが、金融機関の同意を得て、親が所有する土地など自宅以外の価値ある不動産を新たな物的担保として提供することで、連帯債務から外れる交渉ができる可能性があります。金融機関にとっての債権回収リスクが軽減されるためです。しかし、担保として差し出す不動産にローン残高をカバーできるだけの十分な資産価値があることが絶対条件であり、実務上この方法で連帯債務を外れるハードルは極めて高いのが実情です。
住宅ローンを単独名義で借り換える
実務において連帯債務から外れる最も現実的かつ一般的な方法が住宅ローンの借り換えです。家に住み続ける側が単独名義で新たな住宅ローンを組み直し、その融資金で現在の連帯債務ローンを一括返済することで、もう一方は債務から完全に解放されます。ただし、単独での借り換えには、一人の収入でローンを返済していけるだけの年収、勤続年数などの高い信用力が求められます。単独審査に通らない場合は借り換えが成立しないため、事前の資金計画と審査基準の確認が重要となります。
そのほか、連帯保証に関する手続きや解除が難しい場合の対処法については以下のページで詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
連帯債務のまま住み続ける場合の対策
単独での借り換え審査に通らず、子どもの転校を避けるなどの理由で自宅の売却も困難な場合、やむを得ず連帯債務のまま住み続ける選択をすることもあります。しかし、前述した通り連帯債務のリスクは離婚後も消滅しません。そのため、誰がどのように返済を継続するのかを取り決め、将来のトラブルを最小限に抑えるための対策を講じておくことが不可欠です。
強制執行認諾文言付きの公正証書を作成する
連帯債務のままにする場合、毎月のローン返済負担、固定資産税の支払い、将来の売却方針などについて明確に定め、「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作成しておくことが有効です。これにより、元配偶者が約束した支払いを滞らせた際、裁判を経ずに給与や預貯金を差し押さえる法的措置へ移行しやすくなります。ただし、公正証書を作成しても金融機関との契約内容は変更されないため、銀行からの督促や競売手続き自体を止める効力はないという限界を理解しておく必要があります。
連帯債務者の求償権を理解しておく
連帯債務者には法律上「求償権」が認められています。これは、自身の負担割合を超えて住宅ローンを返済した場合、その超過分をもう一方の連帯債務者に対して請求できる権利です。たとえば、離婚協議で「夫が全額支払う」と合意していたにもかかわらず、金融機関から請求を受けた妻が立て替えて支払った場合、妻は夫に対してその金額を請求できます。しかし、現実問題として元配偶者に支払うだけの経済的余力がなければ、資金を回収することは困難です。権利があることと、実際にお金を取り戻せることは別問題である点に留意が必要です。
連帯債務は放置厳禁!早い段階で専門家へ相談を
住宅ローンの連帯債務は、離婚問題において深刻なトラブルに発展しやすい要素の一つです。「手続きが面倒だから」「相手と関わりたくないから」と現状を放置していると、ある日突然、一括返済の請求や自宅の競売といった取り返しのつかない事態に直面するおそれがあります。被害が拡大する前に、そしてローン返済が立ち行かなくなる前に、客観的な状況把握と対策に動くことが何より大切です。
不動産や法律の専門知識が絡む複雑な問題に対しては、当事者だけで解決しようとせず、離婚案件に強い専門機関へ相談することをおすすめします。下記の不動産安心相談室のような無料相談窓口を活用し、現在の家の価値やローン残高を踏まえたうえで、状況に応じた最適な解決策を見つけ出すことが、将来の生活を守る第一歩となります。
