離婚と自宅の明渡請求

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こちらの記事では、離婚後の家の明け渡し請求に関する情報をご紹介しています。例えば、「離婚したものの自分名義の家に居座っている相手を追い出したい」「相手名義の家だが、自分のものにしたい。しかし明渡請求がきた」といったトラブルなどがあります。そこで、建物明渡請求とはどのようなものか、実際の事例を取り上げながら解説していきます。

建物明渡請求とは

建物明渡請求とは、裁判所の判決を経て、居住者を強制執行(強制退去)させるための手続きです。

ただし、明渡請求を受ける側が、自宅を使用する権原(けんげん)を有している場合においては、明渡請求は基本的に認められないと定められています。この「権原」とは「ある行為を正当化する法律上の原因」を指しています。
また、名義がない場合には明渡請求を行うことはできません。

名義がなくても権原はある?

上記の通り、建物明渡請求が認められるためには、名義がない配偶者が権原なく占有していることが条件になります。

ただし、例えば自宅が夫名義となっている場合でも、妻には家の占有権原が認められます。所有名義のない配偶者が、他方配偶者が所有する建物を使用する場合には、主に夫婦間の同居扶助協力義務(民法752条)に基づいた占有権原が認められており、使用貸借関係にあるとされるからです。

ちなみにこの使用貸借関係は、夫婦の関係が破綻していたとしても婚姻関係が続いている間は継続して存在するとされています。

離婚と建物明渡請求のケーススタディ

離婚前に夫名義の家に住んでいて建物明渡請求をされた

例えば、離婚前に夫名義の家に妻が住んでいて、夫から妻に対して建物明渡請求が行われた場合について考えてみましょう。この例の場合、前述の通り民法752条に基づいた占有権限があるとされるため、明渡請求は認められないことになります。

ただし、夫がその家から出ていて、その原因が悪意の遺棄と認められるケースにおいては、建物明渡請求の強い根拠となることから、強制的に退去させられる可能性も考えられます。

判決事例:徳島地裁昭和62年6月23日判決

名義がない配偶者の場合でも、夫婦間の相互扶助の原則条同居の権利を有し、自宅を使用する権限を持っているとされます。

ただし、昭和62年の徳島地裁の裁判例においては、夫が妻に対して多数回に渡って暴力を加えて怪我をさせるなど、婚姻の破綻の責任は主に夫にあるとされています。そして妻にとってはその建物は自らが経営する洋裁店の営業と生活に欠かせないものであるに対し、夫は建物を離れても生活が一応可能であるという理由などから、婚姻関係は続いてはいるものの「明渡請求を正当とすべき特段の自由がある」とし、妻からの明渡請求が認められています。

離婚後に夫名義の家に住んでいて建物明渡請求をされた

民法752条に基づく占有権原は、原則として離婚が成立すると自然解消すると解釈されることから、明渡請求は有効であるとされます。しかし、婚姻期間中にその建物を購入したといった事情で持分が認められるケースがあり、これは財産分与が行われるまでは有効と判断されることがあります。

判決事例:札幌地裁平成30年7月26日 判時2423号

札幌地方裁判所における平成30年7月26日判決を見てみましょう。この事例の原告は元夫、被告は元妻となっており、争いとなっている建物は夫婦が結婚中に元夫名義で購入し、その離婚したというケースとなっています。元妻は離婚後もこの建物に住み続けていましたが、元夫が元妻に対し、建物明渡請求と賃料相当の損害金を支払うように請求しています。 こちらの事例において、裁判所は、財産分与の審判がはっきりと決まっていない当事者間において、婚姻中に購入した財産となっている建物の明渡を求めることは、権利の濫用として認められないという結論を出しています。ただし、賃料相当損害金は認められていることから、明渡は認められないものの賃料相当の金銭は支払うべきである、としています。

夫名義の家だけど、建物明渡請求をしたい

夫名義の家ではあるものの、妻側が建物明渡請求を行いたいと考えるケースもあるでしょう。例えば、婚姻期間中に購入した家であったり、ローンを返済していた家であれば夫名義の家だったとしても共有財産として認められます。ただし、この場合でも明渡請求を行うのみでは自分のものとすることができません

夫名義の家を自分のモノにするには

名義変更をする

夫名義の家を妻が自分のもののする場合には、まず名義変更を行うという方法があります。住宅ローンを完済している物件であれば、夫が妻に家を財産分与することで名義の変更ができます。

住宅ローンの借り換えをする

住宅ローンが残っている場合には名義変更が非常に難しくなります。金融機関の承諾がないと名義変更はできませんが、通常は銀行から承諾を得ることは難しいと考えるべきでしょう。その場合には、住宅ローンの借り換えにより、これまで住んでいた家を自分のものとすることができます。

夫婦間売買を行う

そのほかの方法としては、夫婦間で家を売買する「夫婦間売買」を行うという方法もあり、夫名義の家である場合には代償金の支払いが発生することになります。こちらの方法では、例えば財産分与の際に他の財産を元夫に多く渡し、その分家の価格を抑えた形で買い取るといったことも可能です。

明渡請求が認められるかはケースにより異なる

こちらの記事では、離婚した際の自宅の明渡請求についてご紹介してきました。離婚後に自分名義の家にいつまでも居座っている相手に出て行ってほしいと考えている、相手の名義ではあるものの自分の家にしたいと考えている場合には、こちらの内容を参考にしてください。

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