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夫名義の家だったとしても、妻には一定の法的権利が保証されています。名義を根拠に夫が妻を強制退去させたり、同居にともなう賃料を請求したりすることは、原則としてできません。
離婚時の妻の権利
婚姻期間中に夫婦が購入した家について、たとえ家の名義が夫だったとしても、妻は次の2つの法的権利を主張できます。
占有権原
たとえ夫名義の家であっても、婚姻関係が続いている限り、妻に占有権原という法的権利を有します。
占有権原とは、夫婦間に無償での使用貸借関係があるとされる権利のこと。この権原がある限り、夫から立ち退きを要求されても賃料を請求されても、原則として妻は従う必要がありません。
財産分与
離婚した場合、夫名義の家は夫1人の占有物となりますが、妻は家に関する財産分与を請求する権利を有します。
財産分与とは、財産価値の半分を受け取る権利のこと。離婚にともなって家を売却した場合、妻は売却金の半分を受け取る権利を有します。また、妻が家に残る場合、妻は家の評価額の半分を夫へ代償金として支払うことで財産分与が成立します。
なお、財産分与が完了するまでの間、一般的には上述の占有権原は継続されると解釈されています。
夫名義の家に住み続けるデメリット
離婚後、たとえ夫が家を出ていったとしても、引き続き夫名義の家に妻が単身で(または子どもと一緒に)住み続けることは可能です。ただしその場合、以下の2点は理解しておく必要があるでしょう。
夫が勝手に家を売却する可能性がある
離婚して夫が家を出ていったとしても、家の名義が夫である以上、家の処遇を決める権利は夫にあります。何らかの理由で、妻の承諾なく夫が勝手に家を売却したとしても、基本的に妻は抵抗できません。その場合、妻は家を立ち退かなければならなくなる可能性があるでしょう。
夫の新しい配偶者が家の所有権を主張してくる可能性がある
家を出た夫が再婚した場合、夫の新しい配偶者が家の所有権を主張してくる可能性があります。法的に夫の家である以上、新しい配偶者からの権利主張は決して不当なものではありません。
以上2点の理由から、離婚後に妻が家へ住み続ける場合には、すぐに家の名義変更を行うようおすすめします。
不動産あんしん相談室
神田 加奈氏
離婚と不動産が関連する問題は専門の弁護士に相談を
正式に離婚が成立する前なら、妻には家の占有権原があるため、夫からの立ち退き要求に応じる必要はありません(婚姻期間中に購入した家の場合)。また、離婚後は財産分与が行われますが、財産分与が完了するまでは占有権原が継続するとの解釈が一般的です。
離婚後、妻は家に住み続けたいならば、夫に代償金を支払って家の名義を変更したり、慰謝料として家の所有権を自分へ移転したりなど、様々な方法があります。適切な方法は個々の事情により異なるため、まずは弁護士等の専門家に相談したほうが良いでしょう。
一般社団法人不動産あんしん相談室は、離婚と不動産問題に詳しい弁護士とのネットワークを構築しています。同様のトラブルにお悩みの方は、ぜひ気軽に相談してみてください。
夫の一存で妻に不当な請求をすることはできない
夫名義の家に対する妻の権利には、占有権原と財産分与の2つがあります。これら2つの権利があるからこそ、いかに夫婦が険悪な状態であっても、名義を根拠に夫が妻へ不当な請求をすることはできません。弁護士等の専門家に相談し適切な対応を検討してもらうようおすすめします。