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離婚をして夫婦が異なる道を歩んでいくことになると、所有している財産をどのように分配するかの整理・協議を行わなければいけません。請求できる権利の存続については「除斥期間」と「消滅時効」があり、それぞれで内容が異なりますので解説していきます。
除斥期間と消滅時効の違い
「時効」という言葉自体を耳にしたことがある方は多いかと思いますが、これはある事実状態が一定期間続いたことをもって、その状態に関する権利を取得もしくは喪失するという制度のことをいいます。権利を喪失する方の「消滅時効」には似た意味を持つ言葉で「除斥期間」がありますが、これは「権利を行使しなければならない期間」のことをいい、この2つには猶予・更新や起算点などに違いがあります。
財産分与請求の期日「除斥期間」
離婚の財産分与に関しては除斥期間が2年間とされており、離婚が成立した日を起算日として2年の間に限り財産分与の請求ができるようになっています。この期間のうちに財産分与の中身を決め、請求しなければいけません。
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089#2787
除斥期間は延長不可
除斥期間には猶予や更新という制度がありませんので、離婚が成立した日から2年以内に対応すべきことに対応しきらなければいけません。しかしながらイレギュラーな対応として調停を行うことで財産分与を行う方法もあります。これは一旦離婚を成立させた後に別途「財産分与調停」を行う方法であり、これによって財産分与の議論を調停のテーブルに持ち込むことが可能です。
離婚の成立とは
離婚は離婚届が受理された日をもって成立しますので、除斥期間における起算日はこの離婚が成立した日になります。ただしこれは協議離婚の場合ですので、調停離婚であれば調停が成立した日・裁判離婚であれば判決が確定した日・和解離婚であれば和解が成立した日になります。また、除斥期間は猶予や更新がありませんので、前述した財産分与調停を行ったとしても、その期間を除斥期間から除くなどといったこともありません。そのため調停の申し立てそのものも除斥期間が経過する前に行う必要がありますし、除斥期間経過後に取り下げてしまうと財産分与を要求することができなくなります。
除斥期間を過ぎるとどうなる?
除斥期間である2年を経過してしまうと、法律を背景に財産分与を要求することができなくなってしまいます。そのため交渉は相手の任意という形になりますので、関係が良好であれば議論できる可能性はあります。しかし相手方に対して主張できる権利はない状態になってしまいますので、揉めそうな状況であれば除斥期間が経過するまでに対応しておきましょう。ただし、明確に所有権が分かれているような共有財産に関しては、共有持分割請求を行うことが可能です。これは不動産の持ち分が共有となっている状態の解消を請求するものであり、単独の意思決定で不動産の処分などができるようにするためには必要な請求手続きです。
除斥期間を過ぎても財産分与請求ができるパターン
除斥期間を過ぎると財産分与の請求はできなくなると紹介しましたが、一部で例外的に請求できるケースがあります。一つめはパートナーが財産隠しを行っていた場合です。対象となる財産・議論の前提が崩れていた場合、再度交渉・協議を行える可能性があります。また、除斥期間が過ぎると財産分与における請求権が消失してしまいますが、任意での財産分与は可能です。そのため元パートナーとの関係がそこまで悪くない場合、相対での交渉によって財産分与が可能になる可能性があります。
除斥期間中に財産が処分された場合
車やその他財産が、協議のまとまっていない段階で処分されてしまうケースも起こり得ます。そうなるとその財産を分与することはできなくなりますが、これが両者の同意に基づく処分でない場合には除斥期間中であれば代償金を請求することが可能です。売却した場合は売却資金を原資に分配できますが、廃棄してしまった場合には手元にお金がない状態で分与しなければいけませんので、必ず協議した結果に基づいて処分するようにしましょう。
財産請求権が消滅する「消滅時効」
財産分与の協議に関しては除斥期間内に対応する必要がありますが、この除斥期間内に確定させた財産分与の中身を請求する権利については「消滅時効」の対象となります。これは財産の引渡しを請求する権利の時効ですので、相手から引き渡しがないまま催促せずに放置すると引渡しを受ける権利が消失してしまう恐れがあります。なお、離婚後2年以内に確定した財産分与の請求権利における消滅時効は10年とされています。
時効は伸ばすことができる
除斥期間には更新や猶予がないと解説しましたが、時効は延ばすことが可能です。確定した財産分与が正しく引き渡されない場合、引き渡し請求や調停などを行うことにより時効を引き延ばすことが可能になります。
引き渡しを拒否された場合
強制執行をするための準備・条件
離婚に至るということはある程度関係が悪化した状態になっているケースが多いため、中には決まった財産分与に対して従わず引渡しを行わないような方もいます。そういった場合には強制執行を行うことが可能です。この強制執行を行うためには「債務名義」を取得したうえで裁判所に申し立てを行わなければいけません。債務名義は判決文や調停所などの公的な文書のことをいい、実際に強制執行を行うためには債務者の住所や執行対象となる財産の特定なども必要です。
強制執行の種類(強制競売や明渡しの執行など)
強制執行はお金を回収する「金銭執行」とそれ以外の「非金銭執行」の2種類があります。また、具体的な強制執行としては不動産を差し押さえて売却する「不動産執行(強制競売)」や売掛金などの債権を差し押さえる「債権執行」、不動産を占有されている場合に引渡し・明け渡しをさせる「不動産の引渡し・明け渡しの執行」などさまざまなものがあります。中には子どもの引き渡しについての強制執行を行うこともあります。
強制執行の対象とならない財産
強制執行はどんな財産でもできるわけではありません。債務者が最低限の生活を送ることや、就労・就学のために必要であると判断される財産については差し押さえが禁止されています。具体的に差し押さえ禁止財産とされているものは生活に必要な衣服や寝具、家具、1か月の生活に必要な食糧、66万円までの金銭などが挙げられます。他にもさまざまな差し押さえ禁止財産がありますので、民事執行法をチェックしておきましょう。
第2の選択肢「共有物分割請求」について
共有財産を分割する方法は財産分与に限りません。先にも少し触れましたが、「共有持分割請求」についても紹介・解説していきます。
財産分与と共有物分割請求の違い
「共有持分割請求」は離婚後における財産分与がまとまらない場合、裁判所に申し立てを行うことで強制的に共有状態を解消することができる手続きです。裁判所が認める共有財産の分割方法は物理的に分ける「現物分割」、持ち分の買取を行う「代償分割」、対象財産を強制的に売却してその売却資金を分配する「競売」の3通りがあります。そもそもどこまでが共有財産にあたるのか、また明確にどういった分配の割合にするのかを客観的に判断してくれるため、話し合いがまとまらない場合における選択肢の一つとして利用できます。ただし自身が共有財産を築くにあたって貢献していないという判断をされる場合、想定しているよりも取り分が少なくなってしまう恐れもあります。また、コストがかかるというデメリットもありますので、慎重に判断するようにしましょう。
法律や制度をうまく使い、有利に運ぼう
関係が悪化して離婚に至っている場合、信頼関係のない状態でさまざまな交渉を行わなければいけません。そのためきちんと法で定められた基準・方法で財産分与を行う事が基本になりますが、法律に詳しくなければ損をしてしまう恐れもあります。また、対応や手続きも煩雑になる可能性がありますので、どうすれば自分にとって一番メリットが大きいのかをしっかり検討する必要があります。そんな時にはプロである専門家に相談してみることがおすすめです。