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夫婦間売買とは、家の名義人(主に夫)から配偶者(主に妻)に対して家を売却する取引のことです。不動産売買取引である以上、妻から夫に対して代金を支払う必要がありますが、一般に夫婦間売買では住宅ローンを組むことは困難です。正当な理由があれば、任意売却で夫婦間売買も可能です。
夫婦間売買で住宅ローンを組むのが難しい理由
実態のない売買だとみなされる可能性がある
夫婦間売買で住宅ローンを組む場合、金融機関から「名義変更のための形式上の売買では?」「実際に資金は動くの?」「代金支払いの実態はあるの?」など、様々な視点から疑われる可能性が大きく、実態のない売買の疑いがある場合、審査で落とされる可能性もあります。
担保価値やリスクが不明確だと思われる
離婚後も売主(夫)が同居していたり、関係が続いていたりした場合、金融機関から「実質的に他人への売却ではない」とみなされる可能性があります。この場合、物件の評価額(担保価値)やリスクを正確に把握できないため、融資の審査に大きく影響します。
離婚時の夫婦間売買の流れ
不動産の査定・売買価格の決定
不動産の適正な売却価格を決めるため、まずは不動産会社に査定を依頼します。実質的な贈与を疑われないためには、概ね相場に近い価格を設定する必要があります。
売買契約書の作成・署名捺印
夫婦間売買とはいえ売買契約ですので、第三者との取引と同様に正式な売買契約書を取り交わす必要があります。不動産会社や司法書士のサポートを借りて売買契約書を作成するとよいでしょう。
(必要な場合)住宅ローン審査・実行
必要に応じ、金融機関へ住宅ローンを申し込みます。ただし、多くの金融機関では夫婦間売買の住宅ローンを認めていないため、審査を通過することは難しいかもしれません。一部の地銀や信金、ろうきんなどでは「親族間売買ローン」の利用が可能なこともあります。必要があれば相談してみましょう。
代金の授受
売買契約書に基づき、買主(妻)から売主(夫)へ代金を支払います。帳簿上の記録だけでは売買の実態が疑われるため、金融機関を通じた振込など、資金の流れが分かる方法で売買代金を支払うようにしましょう。
登記申請(所有権移転登記)
売買代金を支払った後、法務局で登記申請(所有権移転登記)の手続きを行い、不動産の名義を変更します。この手続きで名義が変更された時点で、不動産は売主(夫)のものから買主(妻)のものとなります。なお、不動産の登記申請は司法書士に依頼することが一般的です。手数料はかかりますが、売買トラブルを防止するためにも司法書士へ依頼するようおすすめします。
確定申告
売主(夫)の譲渡益が入った場合、売買した翌年の確定申告を通じ、譲渡所得税を納付する必要があります。あわせて、買主(妻)は登録免許税の申告が必要です。
不当に安い価格で売買が行われた場合、割引分に該当する金額が売主(夫)から買主(妻)への贈与とみなされ、贈与税の納税義務が生じることもあります。
離婚時に夫婦間売買を行なうタイミング
離婚の前後どちらがいいかは状況による
「離婚前に売買を行うべきか、それとも離婚後に売買を行うべきか」についてはケースバイケースです。住宅ローン審査、財産分与のタイミング、税務上の取り扱いなどの様々な影響があるからです。
離婚前後のタイミングは、多くの夫婦(特に離婚原因を作られた側)が感情的になり、冷静な判断ができなくなりがちです。専門家に相談し、第三者の目で判断してもらうことも考えましょう。
ローンを組む場合、離婚後すぐや離婚前だと名義変更のためだけの売買とみなされる恐れがある
当記事の前半でも触れましたが、離婚前後のタイミングで夫婦間売買を行って住宅ローンを組む場合、金融機関から「売買実態のない名義変更」を疑われる可能性があります。住宅ローンを組んで売買したい場合には、離婚後、ある程度の期間を置いたほうが良いでしょう。
財産分与は離婚後に行わないと贈与税になる恐れがある
財産分与の一環として妻が不動産を取得する場合には、原則として離婚後に名義変更を行います。離婚前に名義変更した場合、税務署からは財産分与ではなく贈与と判断され、贈与税の納付を命じられる恐れがあるからです。
離婚時の夫婦間売買とは
離婚に伴う住宅の分け方には、「財産分与」「夫婦間贈与」「夫婦間売買」の3種類があります。これらのうち夫婦間売買を選択する場合、適正価格での売買契約が前提となることから、売買手続きには慎重さが求められます。
夫婦間売買のメリット
- 家を手放さなくてよい
第三者に売却した場合、妻はその家に住み続けることはできません(サブリースを除く)。一方で夫婦間売買を行なえば、妻はそのまま同じ家に住み続けることができます。特に子供の生活環境を変えたくない場合には、夫婦間売買が有効な選択肢となります。 - 費用削減につながる可能性がある
条件にもよりますが、夫婦間売買で住宅取得の特例が適用されれば、登録免許税の軽減措置を受けられることもあります。節税の可能性については、税理士や司法書士などの専門家に確認してみましょう。 - 売却代金の流れをコントロールしやすい
第三者への売却に比べ、夫婦間売買では売却価格や支払い方法などを柔軟に設定できる可能性があります。例えば、一括ではなく分割にしたり、支払いのタイミングを調整したりなど、双方の話し合いを通じて実情に合った取り決めができる点は、夫婦間売買のメリットのひとつです。
夫婦間売買のデメリット
- 贈与とみなされる可能性がある
夫婦間売買で時価より不当に安い価格を設定した場合、税務署は時価と売却価格との差額を贈与とみなす可能性があります。税務署から贈与を指摘された場合、贈与税の納付を求められることとなるため、夫婦間売買とはいえ時価を参考に適正な価格を設定する必要があります。 - 金融機関がローンを認めない場合がある
夫婦間売買の支払い資金として住宅ローンを申し込んでも、金融機関から「実取引実態のない名義変更のための売買」とみなされ、審査に不合格となる可能性があります。 - 住宅ローン控除(減税)の適用外になる可能性がある
夫婦間売買で仮に住宅ローンを組めたとしても、住宅ローン減税の適用外となる可能性があります。制度上、「生計を一にしていない親族以外からの取得」などの条件があるからです。住宅ローン減税を受けられない住宅ローンは、他のローンと比べて大きなお得感がありません。
専門家に相談しながら慎重に判断を
離婚時に夫婦間売買を行なえば、妻は引き続き同じ家に住み続けることが可能です。ただし夫婦間売買には、住宅ローンの審査が厳しいことや贈与とみなされるリスクなどもあることから、安易に実行するのではなく、慎重に検討を重ねる必要があります。税金や登記の手続きが煩雑な点も考慮すれば、夫婦間売買を検討する際には専門家への相談が不可欠となるでしょう。
